治水計画の見直しを

このところ、毎日の様にゲリラ豪雨に関連した記事や 
ニュースが、テレビや新聞で報道されていますね。 

詳しく見てみると、浸水、冠水した地域または決壊した河川に、 
ひとつの共通点が見えてきました。 
今回一連の豪雨で被害がでた地域は、数年前大きな豪雨被害が出た地域の上流部、 
すこし内陸の衛星都市に被害が多く見られた様な気がします。 
(岡崎市、八王子市等) 

かつての東海豪雨では、
被害者、避難命令を受けた人達の総数が60万人となりました。
冠水による排水ポンプ不稼動が、事前予知出来ができた筈だとして
住民訴訟まで発展しました。
又関東に於いては、
多摩川氾濫による被害等で 
家を失った人達が出るなど甚大な被害がでました。 
これらの地域は、今回の被害地域の下流に位置します。 

被害状況を調査し、
最近ではポンプ設置、非常時稼動発電機、
PCサーバー等の設置高さの規定が、建築基準法に明記される様になりました。
1級河川管理者国交省指導の元、
各関係官庁及び県市の管理責任者が一体となって被害を最小に留めるため
図面の規格統一化を図っています。
情報の共有化を検討し、災害時直ちに対策本部を立ち上げ
事前に被害拡大縮小の為、努力をしつつある事はご承知の通りです。

残念ながら、現状は
最終放流地点(1級河川放流箇所)
即ち海に隣接する大都市を優先しても対策が追いつかないようです。 
洪水対策施設築造する事業が着々と進み
結果として大都市の被害が減少傾向に転じ始めました。
河川通水断面改修、河川流下バイパス、
地下連結調整池、ポンプ場増設、堤防天端の嵩上げ等の処置…。 
その反面、
大都市を取り巻く新興都市にその逆影響が出始めたのではないでしょうか。

そんな視点で見始めると、
今回の被害都市に、共通点が見えてきます。 
大都市洪水対策施設の完成の中、逆に衛星都市は問題を抱えはじめている。 
その問題とは、
川の下流部での氾濫を防ぐために、 
上流部にある住宅地が犠牲になっているのではないか、と言う事です。

道路、街路、都市化による田畑の減少、
1時間当り降雨の増大、つまりゲリラ豪雨などの
マイナス要因を加味したとしてもそう見えるのです。 

2メートル近くも冠水し、
「数日」ではなく、僅か、たった数時間後には水が引く。 
何故こんなに早く水が引くのだろう? 
もしかしたら緊急避難として、この浸水した地域が、 
下流地域保護のための調整池となったと考えられないだろうか、
ということなのです。

言い換えれば、
浸水した分の水容量を有する調整池を設けていれば、
被害は無かったのではないだろうか?との観点から
最近の災害を見つめ直し、 
被害を最小限に留めようと試みた実験施行が、
最近各所に見られるようになりました。

日経コンストラクション’08年9-12号にも特集記事が出ています。
川の下流の住民の不安を取り除き、実際に功を奏した策を、
こう書いてありました。

宮崎県高千穂町を流れる五ヶ瀬川の上流の
普通河川の全長4キロのうち2.1キロを
住民が提供した用地で断面を広げ、
従来の理論とは逆に上部河川流速を川幅を拡幅する事で、
流速が上がらない様に改修をこころみた。
国のアドバイザー制度を活用し
適用第一号として採用された解決方法。
治水関係者がかねてから
「上流部が下流部の治水に大きく関係する」と、
そう唱えてきた説の採用です。

昨今のゲリラ豪雨を起因とし
本来の河川工学にとらわれず、
下流流域の治水を考え
これらの豪雨にどう対処すべきかを実践したものですが、
関係された上流流域住民
特に用地を提供された人達、高千穂町、施行工事会社と、
九州大学島谷教授に敬意を表します。

このケースの場合、
地方格差にとらわれず、流域全体の問題解決であると理解し、
住民が一体となり取り組んだ見事な例といえます。

それらの延長で、私からの提案です。
上流部の教育施設、公民館、公共施設、
野球場やスポーツ施設などを1メートル、
いや、せめて50センチ掘り下げ、
又はGLを低く設定し計画、周囲を防水壁で囲むと、
どれだけの調整池として活用出来るかを是非検討してもらいたいのです。
ウォーターハザード作成上は、
既存施設の広場は容量にカウントしてはいますが、
実際は周辺の防水壁が用をたしていません。
流出箇所が多々見られ、修復しないケースが多いので
この場合はノーカウントとすべきだと思います。

もちろん下流都市部も同様です。
用地取得費が無い、または適用土地がないとすれば
以下の実例が有ります。
地下街浸水被害で死亡者が出た事を受け、
福岡市道路下水道局
地下に雨水調整池を築造しました。
隣に建設した野球場のGLを1メートル下げ
その下げた分で
更にオーバーフローした雨水をとりまとめます。
調整容量を出来るだけ確保した結果、
その後、豪雨時に地下街の浸水は有いと聞きます。
東京の地下に存在する、
大都市部の連結調整池築造もこの実例の一つです。
首都圏外郭放水路、というものがあります。

都市部の人達と山間部の人達も、同じ国に住んでいます。
「被害人口が多い地域を優先して、治水事業に取り組まなければならない」
この考えに基づいて緊急対策要綱が作成されて久しいのですが、
今や優先する地域は無いと考えます。 
国が緊急課題としている地震対策と同じはずなのです。

「これは天災だから仕方ない」で済ませることなく、
「これは人災じゃないのか?」…ここからスタートしましょう。

自然がもたらす災害予測は大変困難です。
だからこそ問題を共有し、 
解決に当たるべき時が来たと痛感します。 
下水道、河川の縦割り行政を見直し、
地域全体の関係者の参加を募り、
いろいろの立場からの意見・アドバイスを尊重する。
治水事業に本気で取り組む時期が来たのではないでしょうか。
辛抱強く議論すれば、
必ず第2、第3の高千穂町が出現する筈です。

被害総額を知るたびに、 
そのお金で事前に何か出来た筈と思う度に、
実に口惜くてなりません。 

そろそろ「しょうがない!」「仕方ない!」と言う
むなしい会話を止める為の努力を始めませんか?

私からの提案です。 

2008年10月